影夢 己(おのれ)の姿の近ければ 実(まこと)の姿は見えぬもの 人は凡(すべ)て夢みるもの それを夢とも知らずに 己の力に有り余る 理想は空想を重ねて 嗚呼 己(おの)が影となりし想いは 止(とど)まる事を知らず 黄昏の闇に 照らされし影は 不気味に揺らめき 膨らむ姿 誰の姿 影の巨(おお)きさを 己が大きさと 思い上がりしは 誰とは云わぬ 夢翳らん 何故己を誇れるか 実の姿も見えぬのに 己が道を誤らぬと 疑わぬは愚か也 人は誰しも独りでは 生きては行けぬものなれば 嗚呼 今此処に在りし者らが 誇るべきは己か いざ剣(つるぎ)を持て 戦いの刻(とき)ぞ 紛(まご)うこと勿れ 信ずるなかれ 敵は己 その戦いには 誰も立ち入らぬ 己の総(すべ)てを 己に懸けて 立ち向かわん 誇りを棄てて 見るべきは己 その眼に僅かの曇りさえ残していてはならぬ 影を切り裂き その先に見ゆる 実の姿それこそ影ではないと言えようか いざ剣を持て 戦いの刻(とき)ぞ 紛(まご)うこと勿れ 信ずるなかれ 敵は己 その戦いには 誰も立ち入らぬ 己の総(すべ)てを 己に懸けて 立ち向かわん 疑い続けよ 己の姿を 実の姿が在るとは知れぬ 知られぬとも いざ剣を持て 戦いの刻(とき)ぞ 己が行く道は 己が生きた証